保健師のつぶやきNO.6-2
(NO.6-1から続く)
以前、健診後の健康相談で外国人労働者を受け入れている工場の労務管理の方からお話を伺ったことがありました。工場側は彼らの住居も用意するわけですが、ガスの使い方、ゴミの出し方や曜日、周囲に迷惑をかけないような生活(騒音や戸締り、照明等)、コミュニティで生活していく上での基本事項を教えたと話していました。実習生として工場に来る前に日本語の学習をしてきている彼らですが分からない固有名詞もあるでしょうし、教えてもらったことの根拠を理解するのも仕事を覚えることと同じくらいに大変なことだと思います。職場でも作業工程や注意点等を学ぶわけです。そこが彼らにとって本番です。彼らの意欲と能力を考えると頭が下がる思いです。
また異国の労働者を雇うということは、事業所もそれだけ大きな責任を負うことになります。仕事中はもちろん日常生活においてもです。病気になった時、宗教上の様々な制約、無知が故に過失を起こしてしまった場合等。持病を持っていたら、現病歴は、症状は・・。専門用語が出てくる医療機関とのコミュニケーションはうまくできるでしょうか。
宗教上、日曜日に礼拝をしている場合は教会に連れて行っていたという事業主の方もいました。日本での生活、仕事に適応できず、無断で帰国しようとした労働者もいたようです。
どこでどのようなトラブルが起きるか予知出来ないことも多いでしょう。
春先、車通りの多い道路脇にスーツケースを数個並べて半袖・短パンにサンダルの軽装で胡座をかき俯いているアジア系の男性を車窓から見かけました。タクシーを呼ぶ様子でも、誰かを待っている様子でもありませんでした。明らかに違和感があったので気になってしまいましたが、外国人労働者の方だったのかな、本人に声を掛ければ良かったかなと、今も心に引っかかっています。
事業所で頑張ろうとしている労働者と、その労働者が働きやすい環境を整える事業主と、ここにも信頼関係や”おたがい様の精神”が築かれているのではないかなと思いました。
彼らは”自国の家族の為にという働く”という意思も強く、無駄遣いはしないことが多いと聞きました。値段が高い野菜等はあまり買わず、お米ばかり食べていたという労働者もいたようです。
山形の、夏は蒸し暑く、冬は極寒の厳しい自然環境は、四季のない国から来た外国人労働者にとっては身体への負担が大きいと思いますが、初めて見る雪に子供のようにはしゃいでいる方もいたようです。
このように毎年、外国人労働者は増え、それにともない彼らが携わる業種も増えてくることが容易に予測されます。
現在、厚生労働省のホームページおいて数か国語の製造業、建築業、介護事業等、様々な職種の労災予防のマニュアルがあります。これからさらに職種が増え、注意事項も細分化してくるのではないかと思います。
それと共に、日本での生活様式や基本的なマナー等も彼らが分かるように図解・説明していく必要性も感じます。彼らも事業主も日本人労働者も戸惑うことなく、共に働き生活していくための課題でもあると思います。
田舎であるほど、人口に対する外国人労働者の割合は多い印象がありますが、逆に外国人労働者への公的な支援サービスの窓口は少ない、分かりづらいと思います。その辺りも支援内容や規模を広げていくことが、早急に求められる課題だと思います。