健康コラム 2020年10月号
『禁煙は、タバコの害を伝えるよりも”依存状態”を解消することが重要』
寒くなってくると気になるのが、寒い寒いと言いながら外に出て、タバコで一服をする方たちの健康状態(特に血圧)です。寒さとタバコの作用で血管が収縮し、血圧が上がっているだろうな・・・と心配になります。非喫煙者にとっては、なぜそこまでして!?と思ってしまうところで、ついつい口うるさく禁煙を勧めたくなります。
今回のコラムは、非喫煙者には、喫煙者への理解を深め、禁煙のサポートをしていただくこと、喫煙者には、なぜタバコがやめられないのか?を理解していただき、禁煙する方を少しでも増やすことが目的です。
現在、習慣的に喫煙されている方は、過去に禁煙を試みて、何かのきっかけでまた喫煙を再開した、という経験が何度かあるのではないかと思います。また、禁煙はしていないけれども、においや身体への影響が少なさそうな加熱式タバコ等に変えているという方も多くなっていると思います。
しかし、加熱式タバコは有害物質やニコチンが含まれており、身体への影響が少ないわけではありません。また、吸った時に紙巻タバコ以上にニコチンの血中濃度が急速に上昇するため、かえってタバコへの依存が強化されてしまうようです。
周りから禁煙を勧められたり、身体への影響があると知っていてもなかなか禁煙ができないのは、タバコに含まれているニコチンに「身体の依存」「習慣依存」「心の依存」があるからです。禁煙をするためには、自分はどの依存が強いのかを認識し、対処法を知った上で実行することが成功のカギになります。
<タバコに関する3つの依存と対処法>
【身体の依存】
タバコを吸わないでいてニコチンが身体の中からなくなっていくと、不安になる、イライラする、落ち着かない、集中できない、といった症状がでてくる状態。継続的な喫煙によって体内に入ったニコチンが脳を変性させ、ドーパミン(意欲や集中力、心地よい感覚をもたらす)やセロトニン(幸福感ややる気をもたらす)がタバコを吸わないと出ない状態になってしまうことによっておこる。そもそも、この不安やイライラは、タバコを継続的に吸ったことにより起こっている症状である。
(対処法)タバコに代わる他の方法でドーパミンやセロトニンを出せるようにすることが必要で、ジョギングやウォーキングをするなどの「運動」、「朝、日光を浴びる」ことを生活に取り入れることが効果的。そして併せて禁煙外来へ通院し、ニコチン切れの症状が出にくくなる禁煙補助薬を服用することで依存から抜けられやすくなる。
【習慣依存】
「寝起きの一服」「食後の一服」など、生活の中に習慣として喫煙が組み込まれている。毎日同じ場所で同じ時間にタバコを吸う、コーヒーと一緒に、食後に、など、喫煙が何かとセットになっている状態。セットとなっている食後の喫煙ができなければ、食事には満足できない状態。(対処法)今までタバコとセットになっていた環境やモノ(トリガー(引き金))を遠ざける。タバコを吸っていた場所や飲み会に行かない、コーヒーを緑茶等の別な飲み物に変える、食後はすぐ歯磨きをする、散歩に出かける、などの行動や、喫煙習慣を他の行動で置き換えることができるようになると習
慣の依存から抜けられやすくなる。
【心の依存】
タバコに対する認知のゆがみ(考え方のくせ、心のくせ)がある状態。大きく分けて3つの認知のゆがみがあり、①タバコの害を実際より小さく考えるくせ、②タバコを吸うとストレスやイライラを解消できるなど良いこともあると思うくせ、③ニコチン切れの症状(禁断症状)を耐えられないものだと思うくせなどである。
(対処法)まずは認知のゆがみがあることに気づく。人間には、「自分を正当化する方向へ考えを変える」という傾向もあり、喫煙者には①②のくせが起こりやすい。通院や禁煙補助薬などサポートを受けながら行動(禁煙)をしていくことで、認知のゆがみを少しずつ修正していくことができる。
タバコに限らず、習慣化された行動を変えるときにはストレスを感じてしまうことが多いので、周りの人に励ましてもらったり、インターネット等で経験談などの情報収集をすることも禁煙を成功させるためには大事です(参考資料1.インターネット禁煙マラソンのQ&Aは気持ちのサポートになると思います)。また、禁煙をサポートしてくれる「在宅禁煙委員会」(参考資料2参照)というサイトもありますので、参考にしていただけたら幸いです。
【参考資料】
1.インターネット禁煙マラソン 健康と禁煙の情報 禁煙Q&A
http://kinen-marathon.jp/info/health/qanda.html#10
2.在宅禁煙委員会(禁煙補助剤ニコレットを製造販売している企業のページ)
https://www.nicorette.jp/zaitakukinen
3.へるすあっぷ21 教えて!禁煙センセイ 楽しく禁煙する方法
2020年7月号「電子タバコ・加熱式タバコで禁煙できる?」
2020年10月号「習慣依存のトリガー(引き金)を引かないためにできること」
4.東洋経済オンライン「禁煙が全くできない人が知らない3つの依存」
https://toyokeizai.net/articles/-/186575
担当:山形産業保健総合支援センター 産業保健専門職(保健師) 板垣